わたしたちの生活で欠かせない服をつくっているのが「アパレル職人」です。手縫いの場合もありますが、多くは工業用ミシンを使って縫製が行われています。高性能なミシンを用いる場合でも大切なのが職人の技術と目。一着の服ができるまでには、生地の調達、裁断、縫製、検品など多くの手順を踏みます。
1枚のシャツができるまで

いくつものステップを踏んで作られる1枚のシャツは、海外で生産されることも多くなっていますが、ファッションの多様化により、複雑で高品質な仕様や生地を生かすための縫製仕様、オーダーメイドの対応、短納期の製造は、やはり高度なテクニックが必要になる国内工場での生産が向いています。こうした国内の生産ラインでは、それぞれの職人は自分の担当である1つの工程しか知らない単能工(単純労働者)ではなく、3~5工程の複数の異なる作業を受け持つことができる多能工です。現場に多能工が多くいれば、忙しい工程に職人(縫製工)を集中させることができ、柔軟な生産体制が取れますし、管理された「1枚流し」と呼ばれる生産ラインにより、多品種の生産や複雑な少量生産を実現することができます。工場を見渡すと、ミシンがたくさんあるのに縫製工が少ないことから、1人1台ではなく、1人で何台ものミシンを駆使しているのがわかります。
1. 生地

生地は、紙の筒に巻かれたり折り畳まれた状態で工場に運び込まれます。この生地を裁断のために広げて延ばすことを「延反(えんたん)」と言います。延反をすることで、引っ張られたりして余分な力がかかっている生地をもとの状態に戻してリラックスさせ、キズや汚れがないかなどをチェックすることができます。
2. 型入れ

生地の大きさに合わせてコンピュータ(CAD)で型紙の図形データを入力し、無駄な生地が出ないように(1着当たりの生地使用量=要尺を最小におさえるように)パーツを配列します。シャツ1枚を作るには2mほどの生地を使用します。
3. 自動裁断(CAM)

入力した型紙のデータはCAM(自動裁断機)に送られて、1枚ずつ裁断されます。裁断機を使うことで、生地を素早くきれいに裁断することができます。柄ものの生地の場合は、模様部分の縫製がきちんと重なるように、裁断機に設けられたカメラのモニターを見ながら、人の手によってカット部分を微調整します。
4. 手動カッティング

細かい生地の柄合わせが必要なものなど、特殊なカッティングは人の手で行います。
5. パーツ分け

裁断後、カフス、衿、身ごろ、袖、ヨークの5パーツに分けて、それぞれの縫製の工程に進みます。
6. 衿・袖の縫製

衿は芯貼りをして縫い合わせていきます。左右の衿の柄が同じになるように調整し、表の生地が内側となった状態で袋状に縫います。先端が尖った器具で塗ったものを裏返してステッチをかけます。カフスも左右対称になるように調整し、衿と同様に芯貼りをして、柄合わせのためにしつけをしてから縫います。
7. 組み立て

各パーツを組み立てます。身ごろと袖を縫い合わせる「袖付け」や、3重に巻きながら縫い合わせていく「三つ巻き」の裾は、特に高度な技術を要する作業です。
8. ボタン付け

ボタンをつけて、穴かがりをします。縫製を失敗しても糸をほどいて直すことができますが、穴かがりは失敗するとやり直しが効かないので責任重大です。
9. 検査

形が合っているか、衿の幅は正しいか、胸回り、首回り、裾の長さなどが合っているかといった寸法検査をし、糸切り(糸始末)をしたあと、縫いずれや目飛びがないか縫製検査をして、注文通りの仕上がりになっているか、仕様チェックをします。針が残っていないかといった検針も行います。
10. 仕上げ加工

1枚1枚丁寧に業務用アイロンをかけ、仕上げをします。
11. 出荷

手作業でたたんでいきます。
12. 完成!!

こうして日々さまざまなデザインのシャツが誕生しています。